研究内容

RESEARCH THRUSTS

【研究内容】

1. 仮想同期発電機(VSG)制御のような,次世代系統連系インバータ制御手法に関する研究
 仮想同期発電機(Virtual Synchronous Generator: VSG)制御は,電圧形成(Grid-Forming)形インバータ制御の一方式であり,災害や事故時にも強靭な電力系統の維持に貢献する技術です。近年,VSGをはじめとするGFM制御の派生技術が次世代電力系統に広く導入されつつあり,その動特性や安定性の本質的理解が重要となっています。 本研究室では,VSG制御を数学モデルに基づいて解析するとともに,VSG制御インバータを主電源とするマイクログリッド(MG)ミニモデルを用いた実験検証を不可欠な両側面として研究を進めています。理論解析と実証機試験を一体として扱うことで,次世代系統の課題に対する新たな理解と説明手法の確立を目指しています。
研究テーマ(例)
  • インバータベース電源が支配的な次世代電力系統における安定性解析手法の体系化
  • インバータベース電源で構成されるマイクログリッドの電力動揺要因の特定と安定性向上
  • Investigating and Addressing Synchronous Instabilities in Inverter-Based Resources within Microgrids
2. 人工知能(AI)を用いた電力系統安定化手法に関する研究
 近年の電力系統では,再生可能エネルギーをはじめとする新たな電源が分散的に接続されており,各分散電源の稼働・停止スケジュールもそれぞれ異なっています。このように動的に変化する電力系統の安定を維持するためには,想定されるすべての運転状態における系統の安定性を網羅的に解析することが求められます。しかし,膨大な運転状態を一つ一つ再現し,人力で解析を行うことには限界があります。
 そこで本研究室では,限定的に取得した教師データをもとに人工知能(AI)を活用して多様な運転状態における安定性を予測し,その結果から包括的な安定性マップを構築しています。この安定性マップを運用判断や制御設計に活用することで,変動の大きい次世代電力系統を合理的かつ安定に運用するための手法の確立を目指しています。

研究テーマ(例)
  • AIを用いたインピーダンスベースの系統安定度マップの作成
  • AI-Based Estimation of Loop Gain for Impedance-Based Stability Assessment of Inverter-Dominated Microgrids
3. インピーダンスベースのデータ駆動型電力系統安定解析・制御技術の高度化
 電力系統には,さまざまなメーカーによる多様なタイプの電源や負荷が接続されています。それぞれの機器はますます高度化し,人々の利便性を高める一方で,その動作を正確な数式で表現することは次第に困難になっています。 インピーダンスベースの電力系統解析手法は,系統全体を一括して数式化する従来の状態空間モデルとは異なり,部分系統をインピーダンスとしてモデル化し,それらを組み合わせることで系統全体の安定性を評価する手法です。インピーダンスモデルは数式として表現することも可能ですが,機器の内部情報が入手できない場合や,部分系統が大規模・高非線形で数式化が困難な場合であっても,インピーダンスを計測することでモデル化が可能です。このように,計測データに基づいて電力系統の特性を評価できる本手法は,複雑化する現代の電力系統に特に有効な,データ駆動型の解析手法です。 本研究室では,インピーダンスモデルを計測可能とする専用装置を開発し,データ駆動モデルと数式モデルを組み合わせた解析手法により,電力系統解析および安定化技術の高度化を進めています。                                  
研究テーマ(例)
  • 電力系統及び連系分散電源のインピーダンス測定のためのフィルタレスインバータによるコンパクトな摂動発生装置の開発
  • 電力系統の𝒅𝒒インピーダンス解析モデルを用いた安定余裕評価
  • Impedance Based Stability Assessment of Power Systems: Correlation Study on Operating Conditions, Mode Frequencies, and Stability Margins,” The 10th International Conference on Green Energy and Applications 
4. ゼロエミッション社会に向けた二重給電誘導発電機の系統連系技術の高度化
 二重給電誘導発電機(DFIG)は,風力発電や揚水発電などに広く利用される,可変速運転が可能な発電機です。再生可能エネルギーを電力系統へ直接接続できる数少ない回転型発電機の一つであり,系統周波数より速い速度(超同期)および遅い速度(次同期)での運転により,高効率な発電を実現します。 本研究室には,元・大阪大学 伊瀬研究室より譲り受けた10 kVA級のDFIG実験装置があります。大学の実験室としては比較的大容量であり,可変速運転制御や系統連系時の安定性を実機レベルで検証できる本格的な設備です。この装置を活用し,ゼロエミッション社会を見据えた電力システムの構築について,理論解析と実験検証の両面から研究を進めています。 
研究テーマ(例)
  • 高電圧直流送電への仮想同期発電機制御適用検討
  • 二重給電誘導発電機(DFIG)実験装置の立ち上げおよび特性計測
5. 安全・安心・高効率なエネルギーマネージメントシステム(EMS)に関する研究
 キャンパス配電網などの需要家系統には,太陽光発電,風力発電,蓄電池などの分散電源が接続され,その出力変動や運転状態の多様化により,系統運用はますます高度化しています。本研究室では,高機能電力変換装置と分散電源を統合的に制御するエネルギーマネージメントシステム(EMS)を構築し,需給バランス,機器制約,電圧安定性および効率を同時に考慮した最適運用技術の高度化に取り組んでいます。 さらに,大規模停電や災害時においても電力供給を継続可能とするレジリエントな運用戦略の確立を重要な研究課題としています。系統分断(アイランド運転)への移行制御や蓄電池の戦略的活用を含むEMS設計を通じて,平常時の高効率運用と非常時の安全・安心を両立する次世代エネルギーシステムの実現を目指しています。 
研究テーマ(例)
  • 保護継電器と配線用遮断器の保護協調に関する考察
  • キャンパス配電向けEMS基礎検討および実験装置の設計・製作